配信サービスの作品ページに並んでいる評価の点数を、いつからかほとんど見なくなった。以前は星の数や100点満点のスコアを基準にして、高いものから順番に再生していたのだけれど、その選び方で当たりを引けた記憶があまりない。点数が高いのに30分で止めてしまった作品もあれば、平均以下の評価なのに最後まで一気に見てしまった作品もある。数字そのものが間違っているというより、自分がその夜に何を求めているのかと、点数が測っているものが最初から別だったのだと思うようになった。
はっきり切り替わったきっかけは、評価の高い長編ドラマを三本続けて途中で投げたことだった。どれも作りは丁寧で、退屈というわけでもない。ただ、平日の夜に見るには重すぎた。腰を据えて集中しないと面白さが立ち上がってこないタイプばかりを、疲れ切った状態で再生していたわけで、これでは点数がいくら高くても合うはずがない。作品の出来ではなく、こちらの受け止める余力の問題だった。
点数の代わりに先に確認するようになった四項目
今は作品ページを開いたとき、スコアより先に目をやる項目がいくつかある。どれも数秒で分かるものばかりだ。
- 1話あたりの尺。平日は45分を超えると最後まで持たないことが多い
- 全何話か。10話前後なら手を出すが、シーズンが五つあるようなものは連休まで取っておく
- 制作年。古い作品は場面の切り替わり方が今と違うので、時間に余裕のある日に回す
- あらすじの一文目。事件が動く話か、人間関係を追う話かで、見る時間帯そのものを変えている
この四つを見るようになってから、途中で止める回数が目に見えて減った。判断の中身が「評価が高いかどうか」から「今日の自分の体力と、その作品が要求してくる集中力が釣り合っているか」に変わったからだと思う。同じ作品でも、金曜の夜に選ぶか日曜の午後に選ぶかで結果がまるで違ってくる。
評価が割れている作品のほうが当たりが多かった
もう一つ気づいたのは、レビューが極端に割れている作品のほうが、自分には当たりだったケースが多いという点だ。全員が同じくらい満足している作品は外れが少ない代わりに、見終わったあとに何も残らないこともある。逆に賛否がはっきり分かれているものは、合わなければ早々に切ればいいだけで、はまったときの満足度が段違いだった。
だから今は、評価欄を開くとしても平均点ではなく、低い評価をつけた人が何に不満を持ったのかを一つ二つ読むようにしている。「展開が遅い」という不満なら自分はほとんど気にならないし、「説明が足りない」なら逆に楽しめる可能性が高い。不満の中身が自分の好みとずれていれば、それはむしろ見る理由になる。点数は平均されてしまうと理由が消えるが、個別の不満には理由が残っている。
予告編をまとめて先に確認する習慣も、この選び方と相性がよかった。予告編だけ先にチェックするようにしてから外れが減った話のとおり、映像なら自分の目で判断できるので、迷ったときの最終確認に使っている。おすすめ欄自体を自分の好みに寄せておく方法として、気分別にプロフィールを分けておくやり方も併用していて、こちらが効き始めてからは、そもそも点数を探しに行く場面が減った。
結局のところ、点数は他人がその作品をどう受け取ったかの平均でしかなくて、今夜の自分がどれだけ画面に集中できるかという条件は一切含まれていない。優先順位を尺と話数と気分に置き換えてから、見はじめた作品を最後まで見る割合はかなり上がった。数字を完全に無視しているわけではないけれど、参考にする順番を一番下まで落としただけで、選ぶこと自体がずいぶん気楽になった。
レビューを一切見ずに選んでみた三週間
点数を当てにしないと決めたあと、いっそ何も見ずに選んだらどうなるかを試した期間がある。
一週目:選ぶのに時間がかかった
判断材料が減るので、単純に決められない。あらすじとサムネイルだけで選ぶことになり、最初の数日は再生するまでに二十分近くかかった。点数がいかに「決めるための杖」になっていたかが分かる。
二週目:外れを引いたが、気にならなかった
合わない作品を何本か引いた。ただ、点数を見ていないので「評価が高いのに楽しめない自分」という引っかかりが生まれない。合わなかったからやめる、それだけで終わる。この身軽さは予想外だった。
三週目:選ぶ基準が自分の側に戻った
三週目には、あらすじの中のどの言葉に反応しているか自分で分かるようになってきた。自分の場合、舞台が限定されている作品に惹かれる傾向があった。点数を見ているあいだは、こういう自分の癖に気づく機会がなかったのだと思う。
三週間やってみて残したこと
完全に見ない生活は続けなかった。時間をかけたくない日には、やはり点数が役に立つ。今は次のように分けている。
- 時間に余裕がある日は、点数を見ずにあらすじだけで選ぶ
- 疲れていて外したくない日は、点数を見て手堅く選ぶ
- 見たあとで点数を確認するのはやめた。自分の感想が上書きされるため
三つ目がいちばん効いたかもしれない。見終えた直後の印象を、そのまま残しておけるようになった。
点数を見ないと何に困るか
やってみて分かったのは、点数は「面白さの指標」というより「失敗を避けるための保険」として使っていたということだ。限られた時間で外したくないから確認する。時間に余裕があるときは、そもそも保険が要らない。
だから困るのは、時間がない日だけだった。三十分しか取れない日に外れを引くと、その日はもう見る気が起きない。ここは無理をせず、点数に頼るほうが合理的だと割り切った。
他人の感想との付き合い方が変わった
三週間のあいだ感想を読まなかったので、見終わったあとに誰かと話す機会が減った。少し寂しくはあるが、そのぶん自分の中で作品が長く残る。すぐに他人の言葉を読むと、自分が感じたことがそちらに寄っていくのが分かった。
今は、見終わってから一日置いて感想を読むようにしている。一日あれば自分の印象が固まるので、ほかの人の見方を読んでも上書きされない。読むこと自体をやめる必要はなかったようだ。
三週間という長さについて
一週間だと選ぶのに慣れないまま終わり、一か月だと途中でうやむやになりそうだった。三週目でようやく自分の傾向が見えてきたので、結果的にちょうどよかったと思う。習慣を変えて何かを確かめるなら、二、三週間は必要そうだ。
同じやり方は、ほかの選び方にも使えそうだと感じた。いつも参考にしているものを一時的に断ってみると、それが自分にとってどれだけ重かったのかが測れる。やめるためではなく、測るためにやめてみる、という使い方だ。
予告編を先にまとめて見るようにした
点数の代わりに何を手がかりにするか、という話で一番効いたのがこれだった。
きっかけは「1話で切る」を繰り返していたこと
サムネイルとあらすじの一文だけで再生ボタンを押し、1話の途中で「なんか違うな」と離脱する。この繰り返しが、想像以上に視聴時間を無駄にしていることに気づいた。1話分の時間があれば、予告編なら10本近く見られる。だったら先に予告編で絞り込んだほうが効率がいいはずだと思い立った。
実際にやってみた方法
週末にまとめて予告編だけを見る時間を作る
平日の夜に1本ずつ予告編を探すのは結局面倒で続かなかったので、週末の空き時間に候補作の予告編だけをまとめて見る時間を確保するようにした。10本の予告編を見ても合計30分もかからないので、思っていたより気軽に続けられている。
「気になる」と「見たい」を分けて記録する
予告編を見た直後の感覚を、スマホのメモアプリに「気になる」「見たい」の2段階でざっくり分けて記録するようにした。「気になる」止まりの作品は無理に見ようとせず、「見たい」まで来たものだけを本編視聴のリストに入れる。この一手間だけで、結局途中で切ってしまう作品がかなり減った。
公式の予告編以外もあえて覗いてみる
公式の予告編は編集で盛り上がりどころだけを見せていることが多いので、SNSで視聴者が切り抜いた印象的なシーンもあわせてチェックするようにしている。両方を見比べることで、作品のテンションが自分に合うかどうかの判断精度が上がった感覚がある。
習慣にしてから変わったこと
一番の変化は、本編を見始めてから「合わないかも」と感じる頻度が明らかに減ったことだ。予告編の時点で雰囲気やテンポの好みをある程度把握できているので、本編に入ってからは安心して物語に集中できる。結果的に、1本を最後まで見きる確率が上がり、VODを開くこと自体への腰の重さもなくなった。
ウォッチリストが際限なく膨らんで「積み見」状態になっていた頃の反省も踏まえて、今は登録する前に一度立ち止まる工程を増やしたことになる。動画配信サブスクの整理術|使ってみて分かった見直しのコツで書いたサブスクの絞り込みと同じで、「増やす前に一度フィルターを通す」という発想が、結局は快適な視聴につながっているのだと思う。
予告編チェックは手間が増えたようで、実際にはトータルの視聴時間の満足度を底上げしてくれる工程だった。作品選びで外れが続いていると感じている人には、一度試してみてほしい習慣だ。
家族で見る作品を選ぶときにも応用している
一人で見るときだけでなく、家族で一緒に見る作品を決めるときにもこの方法を使うようになった。候補の予告編を家族で一緒に見てから多数決で決めると、いざ見始めてから「思っていたのと違った」と誰かが不満を漏らすことがなくなり、リビングでの映画選びの時間そのものが穏やかになった。
点数の代わりに頼るようになった手がかりの一つに、好きな監督から次の一本をたどる方法がある。


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